皆さま、いかがお過ごしですか?
デンマークでは、12月中旬から全国的にロックダウンしていて学校も休校になっていたのですが、2月8日から小学校低学年(0〜4年生)の登校が再開しました。我が家の子どもたちは低学年なので、やっと子どもを学校に送り出せるようになりホッとしています。
日本でもそろそろ入学・進学に向けた準備期に入っていると思いますので、今回は小学校のスタートである「デンマークの0年生教育」についてのお話しです。
この0年生は小学校の「幼稚園クラス」とも呼ばれ、本格的な小学校生活に入る前に設けられた導入のための学年です(ですので、ロックダウンで休校が続くことには懸念の声が上がっていましたから、この登校再開は本当に嬉しいニュースです!)
「0年生」は日本人には馴染みがありませんが、幼稚園から学校生活(義務教育9年間。10年生は任意)への移行をスムーズにするために設けられた「幼稚園クラス」です。以前は任意だったのですが、現在は義務化されていて、全員が0年生からスタートします。幼稚園を卒園したばかりの子どもたちが新しい場所で新しいクラスメイトに会い、ゆるゆると遊びながら学んで学校生活に慣れていくイメージです。
デンマークには「楽しい環境でこそ学べる」という考え方が浸透していて、友達と良好な関係を築き、楽しい環境があってこそ、学ぶ意欲が湧き、学力が伸びると考えます。そのため、0年生で大切にしているのは、学習よりも何よりも「楽しい学校生活」「クラスメイトとの良好な関係」です。多少の例外はありますが、デンマークでは基本的にクラス替えがないので、長い学校生活のはじまりにクラスメイトと良い関係を築くことはとても重要です。
担任との個人面談の話題は「楽しんで学校に通っているか」「誰と仲が良いか」「学校でどんな様子か」「どんな個性をもった子か」といった内容で、子どもの学習進度についてはほとんど話題になりませんでした(笑)。
0年生が学校に持参するアイテムは、リュックサック・筆箱・お弁当・水筒(保温機能なし)・安全ベスト・着替え・上履きです。また、我が家の子どもたちが通う公立小学校では 1人1台iPadが支給されていて、毎日iPadを持参しています。
学校から支給されるiPadで学習 筆箱(色鉛筆やハサミも入っている小さな道具箱)
お弁当は茶色いライ麦パンにサラミやレバーペースト等をのせたオープンサンドに、野菜やフルーツといった簡易なお弁当が主流です。水筒は保温機能なしのボトルです。
学校に持参するお弁当はとても簡単なもの
指導方法は、学習意欲を引き出すことを第一としています。無理をさせず、好奇心を刺激します。担任の先生が「0年生が机に向かって集中できるのは最長20分。子どもたちを20分以上机に向かわせることはありません」と言っていたのが印象的でした。授業時間を小グループでの活動・iPad の学習アプリ活用・野外学習などに分けて、子どもたちが興味をもって学習できるように工夫をしています。
また、勉強は勉強として独立したものではなく、わたしたちの日常生活で使える便利なツールであるということを何気なく教えます。たとえば、木の枝を拾って数えてみたり、特定のアルファベットで始まる単語を身の回りから探してみたりするなど、日常生活と結びつけた体感型の学習をします。とにかく学校生活を楽しむことが第一なので、時間割には「遊び時間」もきちんと確保されています。
こうして、子どもたちは学校生活に慣れていくのですが、1年生に進学する段階で担任と保護者との話し合いにより0年生をリピートする子もいます。年齢による横並びではなく、子どもの個性を見ながら、子どもにとって最良だと思われる選択をします。リピートというとネガティブに聞こえるかもしれませんが、デンマークでは当たり前のこととしてポジティブに受け入れられています。
日本の教育と比較すると、デンマークの教育は新鮮さに溢れています。カジュアルでピアスやタトゥーをしている先生も少なくありませんが、そんなことは誰も気にしていません。とにかく「楽しく意欲的に学べる環境があればすべてヨシ」という雰囲気です。
いい1日を過ごせるのが一番なので、子どもを学校に送り出すときも「Rigtig god dag!(リグティ・ゴッデ / とってもいい1日を)」と声をかけます。
というわけで、皆さんも「リグティ・ゴッデ!」
【執筆者プロフィール】針貝 有佳(はりかい ゆか / Yuka Harikai Drejer) 北欧デンマーク在住のライター・トランスレーター。東京・高円寺出身。2009年12月からデンマーク暮らし。カフェ好き、読書好き、アート好き。非日常を味わえるような散歩や旅も好きです。 |