皆さん、いかがお過ごしですか。北欧デンマークは少し肌寒くなり、秋が感じられるようになりました。秋晴れがとても爽やかです。

また、9月10日に新型コロナに関するすべての規制が解除され、ただいまデンマーク人は世界に先駆けて「アフターコロナ」を満喫しています。

さて、今回はデンマーク人の家族観とパートナーシップ事情についてお話しさせていただきます。デンマーク人のパートナーシップ事情は、一言で言うと、とてもゆるいです。

デンマークで生まれる子どもの約半数は、結婚していないカップルから生まれた「婚外子」です。子どもを生むために結婚しなければならないという考え方はなく、子どもが大きくなってから結婚する夫婦もいれば、ずっと結婚しないカップルもいます。

コペンハーゲンのニューハウンには愛の南京錠がかけられているが、愛のカタチはさまざま。

結婚して子どもを生んだ後に離婚するパターンも多いです。ただ、共同親権が認められているので、離婚後も子どもを1〜2週間ごとに交代で育てるのが通常です。子どもが父親と母親の家を行き来してデュアルライフを送っているようなイメージです。

驚くのは、別れた元夫婦や元カップルが子どもの誕生日やクリスマスなどの行事の際に、子どもを囲んで集まって一緒にお祝いすることです。子どもの行事をとても大切にし、子どものためには別れたパートナーとも協力し合うところがデンマーク人らしいところです。もちろん、みんながみんなそう上手くいくわけではありませんが、多くのデンマーク人が子どものために元パートナーと協力関係を維持している印象です。

離婚しても子どもの誕生日は一緒にお祝いする。

さらに、子連れで再婚する人も多く、親が異なる兄弟姉妹もたくさんいます。そのため、ホームパーティーに行くと、その場にいる人の人間関係を把握するのに苦労することがあります。一見とても複雑な関係にある人たちが和やかに同じ空間にいる光景を見ると、不思議であると同時に、その包容力に感動します。

デンマークにいると、自分は無意識に「家族とはこういうもの」と思い込んでいたことに気がつかされます。自由なデンマーク人を見ていると、世間体や常識に縛られず、本人たちがお互いにとっての心地よい関係を構築していて、それでいいような気がしてきます。

パートナーシップの築き方は人それぞれ。

そもそも、デンマーク人は他人のプライベートなことにあまり口出ししません。たとえ親子関係にあってもです。そういう意味では、デンマークには、周囲の目を気にしすぎず、自分にとって最適なパートナーシップを築ける環境があるように感じます。

じつはデンマークは1989年に世界で初めて同性パートナーシップ法を制定した国でもあります。現在では同性婚も認められています。毎年夏には「コペンハーゲンプライド」が約1週間にわたって開催され、街中にレインボーの旗がはためきます。

「コペンハーゲンプライド」は、LGBTQIA +(セクシュアル・マイノリティ)の人権を認める社会にするための啓蒙活動を兼ねた大規模なイベントです。
メイン会場となるコペンハーゲン市庁舎前では、LGBTQIA +のグッズ販売やサポート活動紹介のためのブースのほか、大きな仮設ステージでショーが開催されます。また、コペンハーゲンの街中ではパレードが行われ、市民はレインボーの旗を片手にパレード見学を楽しみます。

レインボーはLGBTQIA +の象徴であり、性の多様性を認めようというシンボルです。訪れる人のなかには、旗だけでなくファッションにレインボーカラーを取り入れる人もいます。多様性を認め、すべての人が自分らしく生きる。このイベントは、そんな当たり前のことをあらためて思い起こさせてくれます。

コペンハーゲン中央駅に飾られたレインボーフラッグ。

皆さん、デンマーク人の家族観とパートナーシップ事情はいかがでしたでしょうか。デンマークと日本では法律が異なるので真似るのは難しいとは思いますが、ぜひ皆さんも自分らしいパートナーシップの築き方を考えてみてくださいね。

最後に一言。「Vær dig selv(ヴェア・ダイ・セルフ / 自分らしく!)」

【執筆者プロフィール】針貝 有佳(はりかい ゆか / Yuka Harikai Drejer)
北欧デンマーク在住のライター・トランスレーター。東京・高円寺出身。2009年12月からデンマーク暮らし。カフェ好き、読書好き、アート好き。非日常を味わえるような散歩や旅も好きです。